幸福の青い鳥
【 第8回新民家部門 】
室内に入るや否や、目に飛び込んでくるのは、縦横に組まれた堅牢な梁。
そして、その先に光るステンドグラスには、3羽の青い鳥が…
この家に幸せの青い鳥たち(家族)が集まって力を合わせ紡いでいく…お父様やご姉妹の想いが込められています。
— 想いがつながる古財 —
見上げると、重厚な梁組みが家族を見守っています。
この家は、もちろん、古民家の再生ではなく、新築住宅です。
築80年の古民家に使われていた古財を構造材として再活用することで、長持ちする強い家づくりとなる。先人が行ってきた持続可能な循環型の建築です。
この梁は、やむなく解体されることが決まり、廃棄される寸前の材でした。
ご病気のご主人の想いを汲んだご家族が諦めず、こうして、大切に受け継いでいただける方へとご縁がつながり、新民家として生かされました。
天井板もそうです。
長く歴史を誇る地域の古民家が、惜しまれながらも解体されることになり、そこから取り出された財です。
市教育委員会より委託され、住文化を残すことが叶いました。
今では貴重となった松の床天井は、そっくりそのままピッタリの寸法で収まりました。
まるで、ここに生かされることが決まっていたように…
初めて古材を見たお施主様は、亡くなった愛猫のキーちゃんの背模様にそっくりだと、とても驚かれました。
大切な家族の想い出が蘇り、キーちゃんに見守られながら新しい生活のスタートです。
新たな門出を迎え、新旧の材が調和して、これからゆっくりとじっくりと未来に歩み出します。
— 木を想い、生かす — 住まい手が、健康で長く快適な毎日を送るために、自然乾燥した地域材を100%使用し、手刻みによる加工と土壁の家づくりが、普遍のこだわりです。 床には、30年程寝かせた無節の松材を、いよいよ活用しました。 自然の木の清涼感と漆喰による清浄効果で、なんとも心が落ち着きます。 まるで木に包まれているような、温もりの空間です。 窓を開ければ、風が気持ちよく通り、夏でも涼しく過ごせる家です。 |
|
— 住文化の継承 — 木や土が生きた家、自然のことや地域のことを考えた家、職人の技が生きる総持ちの家… 今は、少なくなっている入母屋、越屋根も、お施主さんたってのご希望です。 和室には、昔ながらの本畳を敷き、組子が美しい建具。どれも地域の工芸です。 昔ながらとはいえ、不思議と、とても新しいように思えるのです。 じっくりと手間暇をかけて作り上げられ、家との絆は深く結ばれました。 |
|
— 「本当の家」に暮らしたい。— お施主様のこだわりは、とてもシンプルでした。 なのに、気付けば11年もかけて、理想の家づくりができる職人さんを探し回られていたと話されます。 住育学校に通い、長い期間かけてさまざまなことを学ばれ、これから家を建てる方達へアドバイスをされたり、体験会なども行われました。 自分の家について知ることは、家を愛すことにつながることだと思います。 住まい手の思いと、造り手の思いが通じ合い、未来へ送る新民家。 自然に寄り添った家で、これから家庭菜園や、ご友人を招いてワイン会を開催したいと夢が膨らみます。 写真は、暖かい縁側で野菜の成長を園芸ノートに記録するお施主様。 特別でない贅沢な時間を楽しんでいらっしゃいます。 |
建設地 | 福岡県八女市 |
構造 | 在来工法 |
階数 | 平屋 |
延床面積 | 120.05㎡ |
家族構成 | ご夫婦 |