「丸沼美術サロン」地域に開かれた場をめざして
【 第5回 新民家部門 】

「美術品を展示したい、音楽の演奏会を開きたい、喫茶店としてくつろげる場をつくりたい、古民家の部材を再利用したい」
初めの建主様からの要望は一見相容れないもののように思われた。
建主は多数の美術品を所有する美術品の収集家であり、絵画に留まらず、彫刻、陶器、銅像など、すべて合わせると美術品は三千点以上にも上るという。
これらの美術品をこの地域の芸術、文化発信の場であると同時に、施設を地域に開き、地域文化コミュニティの場として計画することが要求された。
又、かつて住まわれていた茅葺の古民家が近くの別敷地に建っていたが、老朽化に伴い、その用途を終えた。
古くからなじみのある佇まいを新しく計画する喫茶店の一部に生かして、その雰囲気を継承する事ができないかといったかつての希望を叶えることが求められた。
計画地は緩やかな傾斜地にあたり、敷地に合わせるように計画床高も緩やかに段差を設け、スキップフロアとして、床の段差を利用した展示を考えた。
フロアごとに多種多様の美術品を各種類ごとにエリア分けし、内部はほぼ仕切りのないワンルームであるが、床の段差によって視線が変化していき、展示物の見え方も少しづつ変化していくといった仕掛けを計画に取り入れた。
またワンルームを緩やかに分節していくといった、まさに多様な種類の美術品をタイプごとにエリア分けして展示するには適した構成となった。
また、古民家の小屋梁として使われていた丸太梁を一部再利用し、壁はRC造、小屋組は木造といった形で再築し、古材を継承することで、建物のアイデンティティーと建て主の思い出を継承することができ、愛着の沸く建物となったのではないかと思う。
美術品の展示をして芸術文化の発信基地とすること、喫茶の用途を盛り込み、コミュニケーションを通して、地域活性化の一助となすこと、などお互い相乗的であったり、相容れないものであったりするものを再構成し全体として地域にあったあり方で計画できたのではないかと思う。今後、地域のコミュニケーションの場として深く根付いていくことを願います。
建設地 | 埼玉県朝霞市上内間木 |
構造 | RC造 |
階数 | 平屋 |
延床面積 | 166.27㎡ |
家族構成 | 非公開 |