土田の民家 -アトリエを併設した古民家の改修-
【 第9回古民家再築部門 】
古民家を住み継ぐ
陶芸家と料理家の夫婦、幼い子供たちの4人家族のための住宅。クライアントは新しい生活の拠点とする岡山で、茅葺き屋根の古民家を購入し改修して住むことにした。 敷地周辺には同じく茅葺き屋根の上に金属板を葺き、現代まで住まれている古民家が数軒点在している。元々は農家の為の住まいとして作られたこの住宅は、数度の増築や改修によって少し窮屈な印象の空間になっていた。そこでこの地域の古民家の持つおおらかな雰囲気を取り戻し、民家の在り方を継承した上で、現代的なライフスタイルに合うように大きく間取りを変更することで、古い、新しいという枠組みを超えて、現代における民家の形をこの家族を支える生活の器として蘇らせたいと考えた。
土間と広間
夫婦は仕事上の来客が多く、日々の生活と仕事が連続した暮らしをしていた。 陶芸家である夫は、日中はアトリエで制作を行い、作品を直接見にくる来客の対応がある。妻は人を集め、大勢にご飯を振る舞う機会も多い。そこで制作や来客のスペースである土間・畳間、日中の生活スペースである広間、就寝する寝間の3つのスペースとして再構成した。土間と広間部分は3枚引戸で仕切られているが、その建具を開け放つと50畳ほどの一室空間となる。屋根形状に沿った寄棟形の天井は頂部で4m程あり、非常に大きな空間である。住宅としての機能を超えた、仕事場のようでもあり、地域の集まりの場にもなるような自由で新しい未来の住まいのかたちを考えた。
自然豊かな場所でのおおらかな暮らし
建物竣工時に全てを完成させるのではなく、住みながら考え、その時々で適切な暮らしができることを第一に考えた。子供達が小さいうちには子供部屋は作らず、必要に応じて将来、既存の構造材を利用して簡易に部屋を間仕切れるような構成とした。夫のアトリエを敷地内に併設し、土間部分を子供部屋としても使えるよう想定しており、将来のライフスタイルの変化に対応できる形としている。
土間を見る, 陶芸家である主人の制作スペースと, 棚に展示された作品が並ぶ. | |
広間より, 右手に縁側, 左手にダイニングスペースが見える. 建具を開けると奥に土間が見える. 広間と土間の空間を合わせると50畳, 天井は頂部で4m程大きなの一室空間となる. 天井と垂壁にはラワン合板, 壁はシナ, ヒノキ合板, プラスターボードを使用している. | |
広間がとても広く、それぞれの場所で各々が 遊んだり、仕事をしていても、お互いの存在 があまり気にならなく快適とのこと。ロフトや梁に縄をかけて、ブランコや縄梯子にして遊んだり、子供達も楽しんで暮らしています。 |
建設地 | 岡山県岡山市中区土田 |
構造 | 伝統構法 |
階数 | 平屋 |
延床面積 | 125㎡㎡ |
家族構成 | 30代夫婦と2人の子供 (6 歳、2歳) |