受け継ぐ、ぬくもりの家

【 第6回 古民家再築部門 】

受け継ぐ、ぬくもりの家

大阪のてっぺんと呼ばれる、能勢。 辺りには築100年を優に超える家がたくさんあります。
その中にある築60年程の家。 またまだ新しいと言われていますが、これから長く暮らしを支えることで自他共に認められる古民家となるのではないでしょうか。

今住み継ぐからこそ、歴史はつながります。
そのつながりが、我が家の文化を紡ぎます。
その文化が、日々の暮らしに豊かさをもらたしてくれる。

その思いに共感していただけるお施主様と共に再築ができたことをとても嬉しく思います。

古き良きはそのままに、家を守って暮らしをかえる。
昔ならではの丸太梁がある空間に、最新の断熱材と設備を取り込んで、時代と技術の良いとこどりをして、今だからできる古民家での快適で豊かな暮らし。

薪ストーブ越しに見える田園風景を眺めながら、変わりゆく四季を感じつつ、
築100年に向けて、今日もまた刻々と暮らしの記憶が刻まれています。

家の顔ともいえる正面玄関。今回は特に痛んでいた漆喰部分のみの改修としました。
木部はまだしばらくは大丈夫と判断し、あえてそのままにすることで、今後暮らしの中でどこに多く雨が当たるかなど改めて知っていただくキッカケになればと思っています。

またメンテナンスフリーではなく、メンテナンス前提の暮らしですので、改修の時期をずらすことで定期的な家のメンテナンスのリズムを作ります。
生活の中心となるLDK、今回一番力を注いだ場所です。
というのも再築の計画段階から、隣に位置する和室ではヨガ教室を開きたいという希望があったので、古民家ならではの「しっとりとした雰囲気」を残し、他の部屋より少し自然に近い空気感が漂う空間にする為、もともと使われていた木建具の調整のみを行い自然な風が流れるままに、中と外の〝間(はざま)〟となるようにしました。
そこで、その和室の環境がLDK等に影響しないよう、境界となる壁を断熱改修、出入口の障子を太鼓張りにするなどの策を施しました。

また少し山深い所に家がある為、2階の窓から入る光の一部がリビングにまで届くようちょっとした細工もしてあります。

【お施主様より】
築約60年のこの家は、父が小学生だった頃、祖父や曽祖父らが地元の大工さんと共に、山から木を切り出し建てたものだそうです。 そこに生まれ育った私にとっては
「大好きな家族と過ごした思い出の家」。

子育てを機に実家へ戻り、母屋を再生して住み継ごうという折に、「次の100年住み継がれる家」をつくる坂井さんと出会えたのは本当に幸運で、きっと必然でした。

再生してみると、、、和室の良さはそのまま残り、
「暗い、狭い、寒い」 という負のイメージは
  ↓
「大きな窓で明るく里山風景が最高に綺麗、古い梁を生かした広々空間、冬も断熱と薪ストーブであったか」に。

子どもに「あの太い梁は、おじいちゃんのおじいちゃんがね…」と昔話のように話し聞かせるのも楽しく嬉しいです。
(ご先祖さまを近くに感じてくれるのかな〜)

この家に昔住んでいた親戚は「こんな素敵にしてくれて、ありがとう。戻ってきてくれて、ありがとう」と涙ながらに言ってくれて。 たくさんの人の想いを乗せて、かけがえのない家へと生まれ変わった母屋。

ここに暮らしてゆく中で、古き良きものを大切にする心が育まれ、また受け継がれてゆくといいなぁと思います。

建設地大阪府豊能郡能勢町
構造伝統構法
階数二階建て
延床面積228.17㎡
家族構成30代夫婦と子供1人