想いを育む終の棲家

【 第6回 古民家再築部門 】

想いを育む終の棲家

親御さんたちが建て、ご主人さんが生まれ育った住まい。ご両親が他界されしばらく空き家となっていた住まいを処分しようかと悩んでいたご夫婦から相談を受けました。しかし話を聞くうちに…思いとは裏腹に、ここで生まれ自身も思い出を育み育った住まいへの想いや、ご両親が守り続けてきた住まいを手放すことに悩んでおられる様子でしたので、思いの詰まった住まいを手放さず自身の終の棲家にすることをご提案しました。ご夫婦の想いは直ぐに固まり、この家に住まうことを決断。背中を押すきっかけとなった私に、工事開始から現在に至るまで、とても感謝して下さいまして、改めて住まいの在り方を深く考える事に繋がりました。

全面道路は狭く、軽四がようやく通り抜けられる道にぎっしりと流布いい絵が立ち並んでいます。その中にひときわボロボロに朽ちたべニア外装に、ご両親がピンク色のペンキを塗り防水している外観でした。水が回り足元は構造の一部が見えるまで痛んでいた外装を解体し、周りの景観に溶け込むように無垢の杉板を縦張りに貼り付け、腐食防止に環境に配慮した塗料で新しすぎず、明るすぎない色を着色し、時代にも逆らわないような外装仕上げとしました。
今回の再築ポイントの一つに、基礎や構造を含め耐震補強しました。一部石場建てだった基礎や湿気を含む土間に防湿処理をし、石場建て基礎をコンクリートで固定。揺れに対する強度を保ちました。写真は続き間だった8畳と10畳の和室を耐震補強したことで、ひとつながりのLDKに変更しました。もちろん光の届きにくかった奥のままで優しい太陽の光が射しこむように、窓も高性能な複合型樹脂サッシに取り替え、温熱環境の改善にも留意しました。地元の無垢杉板を使い、足元は柔らかく暖かい仕上げとし、高齢の夫婦に住まいやすさに配慮した空間設計としております。
当初は玄関段差が45センチ以上もあり、玄関に上がるだけで一苦労でした。また今後は転倒事故にもつながる恐れがあることから、既存の玄関タイルなどはそのままに、当時の面影を残しつつ、杉の式台を設け、段差を解消するだけでなく、腰を掛けられるような安全な玄関をつくりました。

建設地愛媛県四国中央市三島宮川
構造在来工法
階数二階建て
延床面積94.44㎡㎡
家族構成60代の夫婦