マチに寄与する美容室

【 第5回 古民家再築部門 】

マチに寄与する美容室

敷地は長野市の市街地、大小様々な店舗が建ち並ぶ幹線道路に面している。周辺 には学校が多く、子どもの姿も多く見られる地域である。本計画はそこに建つ築50 年を超える店舗兼住宅であった建物の改修計画。美容室の機能に加えて、住居、雑 貨販売スペース、更には地域に開く展示室や学習室、イベント利用など多岐にわた る機能を要求された。そこで、空間を細かく分断していた間仕切り壁を取り払うこ とで様々な機能に対応するフレキシビリティを担保すると共に、一部2階の床を取り 払い吹き抜けを持つ開放的な空間を目指した。

この建物では建物の歴史を尊重しつつ新しい要素を加えた空間が求められた。そこで昔と今の間のようなしつらえにすることを考えた。既存の建物のどの部分を残 し、どの部分を新しくするかという考え方ではなく、新旧のコントラストをなじま せるような改修を行った。その一つは素材の漂白と研磨である。経年による汚れや シミの黒ずみは表面的な劣化であり、素材自体は利用可能であることが多い。その ような観点で既存部材を吟味し、柱・梁・天井・建具に対しては漂白、床に対して は研磨を施し、材料を素地の状態に近づけた。また、経年劣化、旧い形式を消しき らずに手を加えることも行った。
各スペースで行われるアクティビティを考慮して、そのまま残す旧材と新しくする 新材、さらには中間のような材を使い分けることで、スペースに対して各々異なる キャラクターを与えた。
吹き抜け部分を全面白く塗装する際、柱、梁に対 しては経年で起こるひび割れ等を塗り込まず割れ部をそのままの状態とすること や、吹き抜け部にはかつて床の間であったことを思わせる造作材を解体せず部分的 に残している。

建設地長野県長野市
構造在来工法
階数二階建て
延床面積83㎡
家族構成非公開