”武蔵境の家”新たな価値の獲得へ向けて
【 第4回 古民家再築部門 】
古民家を再生しようとするとき、「残す価値」を見出せるかどうかが最も大切で、特に戸建リノベーションはその判断が難しい。
改修の工事費だけの話をすると、場合によっては新築の方が安いケースもある。「残す価値」という積極的な理由をどう見出すか。今回は”再建築不可”という敷地条件に見出した。
土地が道路に面していないため、細い路地を抜けて玄関にアプローチする。周りは住宅の壁に囲まれていて、見方を変えればプライベートコートのあるコートハウスのよう。
その建物に手を加えることで、全体の価値を高めたいと考えた。
建ぺい率は40%と比較的ゆったりした建ち方で、東西南北に様々な性格の庭をつくることができた。それらの庭と既存の構造フレームとの調整を図りながら、開口の位置や大きさを決めた。そのように接続された環境を、内部全体で受け入れる為に1・2階全体をワンルーム状態のおおらかな空間とすることで、庭の木々の表情や季節の移ろいを感じられ、外部と呼応する家となった。
2階部分は軸組はそのままで、そこに新たな機能を待たせた収納の白いボックスを挿入。 既存構造のダイナミックさとモダンさを融合させている。 |
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版築キッチン。 1階LDKの中心には、伝統的工法の土を突き固めた版築壁でキッチンを製作。 既存軸組を拠り所としながら力強く立ち上がった。 |
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元からある佇まいや、表情のある木材、版築、左官が有機的な表情を感じられます。 それらを感じながらも最新のサッシ、断熱を施すことでエネルギーを無駄にすることなく、快適な生活が両立できて満足しています。 外から帰ってきたときに、松の玄関ドアを開けると掻き落としの左官壁と、間接照明の柔らかな光が迎え入れてくれてほっとします。 |
建設地 | 東京都武蔵野市 |
構造 | 在来工法 |
階数 | 二階建て |
延床面積 | 77.08㎡ |
家族構成 | 40代夫婦 |