築120年 家族の絆を紡ぐ家

【 第3回 古民家再築部門 】

築120年 家族の絆を紡ぐ家

大きな銅葺きの屋根が特徴的な、立派な佇まいの古民家です。 当初、「この大きな屋根が好きになれないので、瓦に葺き替え、勾配をゆるくして目立たなくしたい」というのが大きなご希望のひとつでした。しかし、この古民家の趣を形造る大きな要素である屋根を変えてしまう事は、いかにも勿体無いと思い、屋根裏にもぐり、雨漏りや梁の状態、寄生動物の有無等詳細に点検した上で、40年前に銅葺の改修工事を行った、お父様(故人)や今もお元気なお母様の思いなど、色々なお話をさせていだだき、残させていただく事になりました。 全体的なコンセプトとしては、建具など再使用可能な良いものは残し古民家の趣を尊重しつつ、最新の設計思想や設備を融合させ、快適な住まいとしました。しかし、このお宅の改修の最大の特徴は、古民家で在りながら、建築確認及び、検査済み証を取得しているという点です。 住まいの基本である、安全、安心、快適に加え一族の歴史を残した、唯一無二のお住まいになりました。

家全体を一旦1m50cm持ち上げ、ベタ基礎を造りました。 また、地耐力調査、耐震計算、耐風圧計算、N値計算も行い、現行の建築基準法に合致させ、建築確認及び検査済み証も取得し、14坪の増築を行い、痛みやすい水廻りは増築部分に設置することにより、古民家本体の傷みを軽減しています。床下空間も約80cm確保し、古民家最大の敵である床下の湿気とも無縁となっています。これから先も100年単位で受け継がれていく事をお施主様共々期待しています。
最新の水廻り設備や床暖房を採用。古民家の場合、間取りの特長から設置に困る事が多いエアコンの取り付け位置も、配管の取り回し等、事前に詳細な打合せを行い、困る事の無いようにしました。また、このお宅は銅葺屋根の為、電波を遮蔽してしまい、外に出なければ携帯電話が使えない事が、着工前から解かっていましたので、携帯電話会社と相談の上、対応機器の設置も行うなど、現代生活にマッチした対策を施しながら、古民家の立派な材料や雰囲気を最大限に生かす配慮もいたしました。 当初、お母様が、仏壇が建物に比べて貧弱な事を気にしていらっしゃいましたが、工事途中に急遽造り替える事になり、立派な仏間が出来上がりました。この仏壇は、お嫁さんである奥様からのお申し出により実現し、費用も奥様が負担され、奥様からのプレゼントとなりました。今回のリフォームにより、さらに家族の絆が強くなったエピソードだと思います。
工事中に屋根の一番高い位置の母屋から、昭和8年に改築した時の墨の書付が見つかったり、荷物整理の際に、江戸時代、宝暦5年(260年前)の年号が入った書面が見つかるなどして、ご長男が、「この家は、俺が守っていかなければいけないな」とおっしゃった事を、立派に完成したお宅を見ながら、ご主人が嬉しそうに話してくださいました。今回の工事を通して改めて、家は一族の宝、家族の絆を紡ぐものと言うことを実感すると共に、これからもこの思いを大事にして、お客様と共に良い住宅を造って行きたいと思います。

建設地千葉県東金市
構造伝統構法
階数平屋
延床面積196.78㎡
家族構成60代のご主人、50代の奥様、80代ご主人のお母様
会社名