築120年 新たな主(あるじ)と共に

【 第3回 古民家再築部門 】

築120年 新たな主(あるじ)と共に

軒の出巾が一間も有り、化粧垂木が映える立派な古民家です。外壁は耐久性、メンテナンス性、防火性を考慮して、大判のサイディングにつや消し塗装で漆喰風に仕上げ、腰高までは、焼いた杉板の完全に炭化した部分を薄くそぎ落とし、ウレタン塗装を施して張り付けました。また、ペアガラスのアルミサッシを採用し断熱性や防犯にも配慮しました。床下の湿気は、古民家を傷める原因になる為、耐震補強部分以外は、出来るだけ多くの換気が出来るようガラリを大きく取りました。

土間だった部分はシューズクロークを備えた約10帖の玄関とし、天井高5mの大空間に45cm角の欅の大黒柱と60cmの差し鴨居、複雑に構成された大きな梁を引き立たせるため、壁は本漆喰で仕上げました。
手前の仏間は、畳を撤去しタモの無垢材に柿渋を塗って仕上げた板張りとし、寒さ対策に床暖房も設置しています。 天井高を3m50cm取り、見事な丸太梁と天井を照らす間接照明で空間を演出しています。 縁側だった部分を部屋に取り込み、別の場所にあった欅の床材を製材し直して使用しています。また、この部分をあえて一段低くして、腰掛けることができるようにして、庭を眺めて和んで頂けるようにしました。 続き間だった奥の和室はダイニングキッチンとし、カウンターデスクを備えた家事コーナーやキッチンの裏には5畳のユーティリティも設置しました。
平成17年にこの古民家をご購入され、リフォームをしてお住まいになっておられましたが、約8年間住むうちに憧れだけでは許容できない、古民家特有の住みにくさを感じるようになり、ご相談をいただきました。せっかく好きで購入された、古民家で、より快適に暮らしていただけるよう、あらゆるご提案をさせていただき、打ち合わせを重ね、お施主様と共に創り上げることができました。奥様は、明るいダイニングキッチンから庭を眺めるながらの家事が楽しいと喜ばれ、ご主人は、10帖の書斎にしつらえた、照明付きの飾り棚に、趣味のへら鮒釣りに使用する、漆に蒔絵を施した釣り竿を飾って、これを眺めながらの晩酌が至福の一時とおっしゃっています。築120年の古民家が、新しい主を迎え、新たな価値を発揮できる空間になったのではないかと思います。

建設地千葉県四街道市
構造伝統構法
階数平屋
延床面積261.86㎡
家族構成60代夫婦 30代ご子息
会社名