時をかける100年前の古民家の新たな一歩

【 古民家再築部門 】

 

 

 

 

 

時をかける100年前の古民家の新たな一歩

地方から都市へと、若者を中心に大幅な人口移動が起きた高度成長期。これにより日本の核家族化が進み少子高齢化や人口減少という社会問題を抱えている日本ですが、住宅業界においても「空き家の増加」という形でその影響を受けています。スクラップ&ビルドの考え方が多い傾向のわが国において、施主様ご家族のお住まいが「空き家」から生まれ変わった新しい「古民家」として、子どもさん達の代まで大切に受け継がれ次の100年に向かって歩み出したことを嬉しく思います。

元々ご実家の古民家再生に興味のなかった息子さんは、完成したご実家を目の前にし改めて古民家の素晴らしさを実感されたとか。さらに、将来的には親から引き継ぎ残していきたいとまで思われているそうです。

みんなが完成を楽しみにしてくれていることがすごく嬉しくて「自分達だけで愉しむのは、もったいない。」と話す施主様ご家族。次に計画されているのは、地域に関係人口を創出する体験型観光農園。そこに訪れた人々のコミュニティスペースとして、これから活用されていく予定です。

今回の古民家再生でご主人様が幼少期に描かれた落書きが壁の中から現れた時には、当時を知らない私達ですらどこか懐かしく温かい気持ちに包まれました。そんな思い出と共に、施主様ご家族のお人柄に惹かれてたくさんの方々が集まり新たな思い出が描かれるそんな美しい情景が目に浮かぶようです。

天井を取ったことで、施主様ご家族が改めてその低さを実感された古民家ではよくある低い天井。
現代人には圧迫感のあった天井を表しにすることで開放感が生まれ、縁側のある障子戸を通して暖かい陽の光が差し込む明るい空間となりました。
向きを変え広いスペースを確保した玄関には、竹を縄で組んだ土壁の骨組みである「竹木舞(たけこまい)」を建設当時のままのカタチで、玄関飾りとして再利用しました。
近所のおばあちゃん達が、施主様のお母様とよく世間話を楽しまれているという土間玄関。三段ある上がり框に座ってゆっくり寛げるので、ついつい長話しになってしまうことも。ひとつの絵画のような何気ない日常に描かれるコミュニケーションの風景が、ご家族のお気に入りの場所となりました。
ご主人様の実家である果樹園を継承し、お母様と共に運営をしている奥様。2年前に母と相談していた時には取り壊す予定だったんですが、「これだけの家を取り壊すのはもったいないよね」って、家族や親戚と話していたんです。そんな時に、ひょんな事から古民家再生協会の方々と出会い「どうせなら、きちんとしたカタチで古民家を残されませんか?」とご提案いただいたことがきっかけでした。
玄関には土間もあるので、色んな方とのコミュニティースペースにしたり家業の果樹園と絡めたちょっとしたイベントもしてみたいなとか、やりたいことのイメージがたくさん浮かぶんです。子どもたちも大切に思ってくれているこの家を、職人さんも含めてみなさんとコミュニケーションを取りながら一緒に造っていただいて、このようなカタチで残すことができたことに本当に感激しています。

建設地熊本県宇城市三角町
構造伝統構法
階数平屋
延床面積110.00㎡
家族構成非公開