静かな佇まい

【 古民家再築部門 】

静かな佇まい

まわりは古い家が立ち並ぶ一角にある古民家。田舎によくある風景です。
そんな田舎にもあちらこちらで人がいなくなった家が増えてきています。

築102年のこの家も、老朽化のため近くに新築され、空き家になるところでした。
長く住んでいると、リフォームして住むという選択肢はなかったのでしょう。解体するしかないと言われるまででした。

新しい家が出来上がり、この家とも「さよなら」という時の出来事です。
引越しの荷造り中でした。通りすがりの人が声をかけられたのです。
「引越しされるのですか?」
この一言からドラマが始まりました。
家を去ろうとする人と古民家に住みたい人との偶然の出会いでした。
取り壊されるはずの古民家が生かされることになった瞬間です。
それから、コトは順調に進み、古民家再生協会へ調査の依頼があり、再築することになりました。

建てられて102年、幾世代の人達の様子を見てきた古民家。
そこにはいろんな思いがあるはずです。
中の建具や家具も、全てが味わいのある物ばかりでした。

”元の雰囲気は残しつつ斬新な造り”ということで、二間続きの畳の部屋を板張りに変え、壁は真壁で土壁はできるだけ残し、床柱が居間にあっても面白いのではないかと思い、そのまま活かしました。
新しく使う材にも拘りを持ち、構造材と同じ自然乾燥させた地域材で仕上げました。
床板は、30ミリの杉板で、足触りの柔らかさを味わうことができます。
建具も古いものを使用。特にガラスは、手造りを味わえる古いガラスで落ち着きある雰囲気になりました。
ご希望の「薪ストーブ」も居間に設置。寒い冬場には、火を見て過ごせる贅沢な時間を楽しめます。
古民家の造りは、伝統的な造りで柔構造(免震)です。当然このお宅も免震構造でして、構造体は手を付けづ、天井上に隠されていた梁を吹抜けとして見せることで、圧迫感を和らげるコトができました。
そして、屋根勾配状に杉板を張り、壁は荒壁の土壁をシックイ仕上げとして、明るくなるよう意識した仕上がりとなっています。
子育て期は、新興住宅地に建つツーバイフォー住宅に住んでいました。退職後は、田舎でのんびり暮らしたいと思い、夫婦で足を運び古民家を探していました。
ご縁あって、今の古民家に出会い、これから自分達らしい暮らしができるようにするために、いろんなことを学び知る内に、古民家再生協会を知り、調査やアドバイス、また工事の監修をお願いし、筑後市の移住定住促進の空き家ツアーでも紹介されました。
子ども達も帰省時は、新しい家でありながら、自然の温もりに「実家と思える」と話しています。
高齢者の多いこの地域では、近隣の草刈りなどを手伝ったり、お役に立てることにも嬉しく、充実した毎日を過ごしています。

建設地福岡県筑後市
構造伝統構法
階数二階建て
延床面積209.37㎡
家族構成60代夫婦