寺子屋 円満寺
【 古民家再築部門 】
「時代に流され使われず老朽化していく本堂を、たくさんの人たちが寄り添える場所に作り替えたい。
そして人と人とをつなぐ場所にしたい。」
施主の住職は以前からそう考えていました。
「いま、私たちの社会では人と人とのつながりが薄れています。
学校や地域で私たちを取り巻いている様々な問題は、そこにも原因の一つがあるのではないでしょうか。ひどく悩んだとき、誰かにそっと打ち明けることができれば、人生をやり直すきっかけを得られるに違いない。
私がつくりたい「新しいスタイルの寺」は、世代を超え、人種や民族・国境を何ら問題にしない集いの場です。決して難しくなく、厳しくなく、人と人がゆるく繋がる思いきり楽しい寺をつくりたいと考えていました。」
そんな住職の想いを受け止め、私たちは、お寺で安心して集えるよう耐震補強工事と、使いやすくなるよう改修工事を行いました。
■耐震補強 円満寺の歴史は古く、江戸時代初期(1600年代)には、お堂が存在していたことが分かります。 現在の本堂は嘉永5年(1852年)に建築、築167年になり、太い柱や梁などはしっかりとしながらも、屋根が垂れていたり、各所木材が割れていたりと経年劣化や老朽化が激しく、危険な状況でもありました。そのため、住職と相談して、みなさまに安心して来ていただけるよう、耐震補強工事を行うことになりました。 しかし、現状維持の補強計画は限界も出てきます。それは、重量が大きく関わるためです。 基礎、壁の補強ができても、瓦や土によって重くなり、またそれにつれて重心が高くなっていく屋根がもとのままでは、不安定な状況は十分には改善できないのです。 そこで今回の工事では、屋根葺き材を土葺きの瓦から銅板に替え、さらに、入母屋だった重厚な屋根を軽快な寄棟に改築しました。その際、勾配も緩くしたことで高さを抑え、改築前は28tほどあった屋根が改築後には1.5tほどに軽量化することができました。 |
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耐震壁には90×90の桧の木材を組んだ格子の耐力壁をはめ込むことで、伝統工法の特性を妨げず、また重心が偏らないようバランスよく補強をしました。 格子状なので、格子戸に重ねるように設置しても、外の自然な光や風を取り入れることができます。 正面の入り口には格子戸を設け、いつでも中に入れるようにして仏さまを身近に感じられる造りにしています。 |
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中央には本尊の「大日如来像」(江戸時代初期の作)と、両脇には脇侍として「馬頭観音像」「弘法大師像」が安置されています。奥の左右の壁には「千体仏」とよばれる仏さまがまつられ、仏具屋さんによって1対1体きれいに磨かれました。 寄棟にして高さを抑えたやさしい姿といぐさの香り、ライトに照らしだされた本尊が参拝される方たちをやさしく迎えてくれます。 耐震工事が完了し、仏さまもきれいになって明るい空間になった本堂は、みなさまに気兼ねなく利用してもらえる憩いの場となり、今日も村人たちが集います。 そんな円満寺本堂耐震改修工事になりました。 |
建設地 | 三重県鈴鹿市 |
構造 | 伝統構法 |
階数 | 平屋 |
延床面積 | 69.81㎡ |
家族構成 | 非公開 |