第9回再築大賞 受賞発表

第9回再築大賞受賞発表が一般社団法人全国古民家再生協会 全国会員大会内で執り行われました。
受賞作品は以下の通りです。

施工:サンカクスケールLLP  [埼玉県川口市]
ならのきの家 築175年の住まい再⽣物語

《受賞理由》
大梁のあらわしでの活用や大工造作により外観・内装は再築前の趣を残しつつ、基礎を作り直すことで耐震性に配慮している。
現代の住まい方にあわせて減築し、冬も暖かに過ごせるよう環境を整えていることからも、築175年の古民家を長く住み継いでいこうというコンセプトが伝わってくる良い取り組みと感じる。

『ならのきの家』は江⼾末期に建てられた。
当時から屋号として『ならのきさん』と呼ばれ親しまれており、今回の設計中・⼯事中もこの住まいの愛称として呼ばれてきた。

ご家族は敷地内にある別の建物で暮らし、『ならのきの家』に⾵を通しながら⼦どもの遊び場や、施主のお仕事である園芸活動の場として利⽤されていた。
この家を残して欲しいというお⽗様の遺⾔により、茅葺にコロニアルを載せたままひっそりと佇んでいた古民家。活⽤⽅法を模索し、⼟間部分はカフェやイベントなどで利⽤、最終的にはご家族も暮らせるような形に。
古い建物の良さを残し、耐震性と温熱環境を整え現代でも暮らしやすくというコンセプトの元、古建具も利用。構造材は一度解体し洗いを掛けて組み直し、耐震性を考慮し基礎もやり変えた。
「次の世代に住み継ぎたい。」
施主の想いはカタチとなり歴史を刻んでいく。

施工:⼭本産業株式会社  [岐阜県本巣市]
⾃然乾燥100%のぎふの⽊の家

《受賞理由》
構造から内装まで地域産材をふんだんに活用することにより、施主の希望に応えるのみならず、林業・木材産業も含めて地域の家づくりを支える産業の活性化にもつながる、持続可能な建築だと思う。地域の雪深い気候にも配慮した設計となっており、将来の長きにわたり受け継がれていくことを期待したい。

木の香りに包まれて、山小屋風の家で暮らしたい―――
構造材・使用木材は岐阜県産ひのきと杉をメインにし、自社工場にて製材。1年以上かけて天然乾燥した木を熟練の大工が柱1本1本丹精込めて手刻みで加工した。
リビングの内装も岐阜県の天然乾燥材を使い、オリジナルのTVボードや木製建具、天井も岐阜県産の材を使用。屋根を長持ちさせるため、瓦の下の野地板も無垢材に。小屋裏を見た方「もったいない!これを隠すのですか?!」と驚くほどのこだわり。
岐阜の木をふんだんに使った天然乾燥100%の家は、親子代々受け継ぐことができる、ぬくもりにあふれた木の住まいに。
雪の多い地域なので、玄関周りは庇(ひさし)を深くして、雨や雪の降る日も安心して出入りできるよう配慮。玄関わきの南側にはウッドデッキをこしらえ、お茶を飲みながら日向ぼっこを楽しむことができ、まるでリゾート地のコテージに居るかのような、ゆったりとした時間が流れる。

施工:株式会社建築⼯房work・space  [鹿児島県日置市東市来町美山]
美⼭別荘

空き家だった古民家の再築。
改修前に古民家再生総合調査を行い、建物のコンディションを確認。
再築工事は、屋根瓦の取替、外壁の補修、内部の模様替え、外壁面と床は断熱材を設置。 古民家の持ち味の陰陽の美を生かす為、既存の障子や襖、ガラスや建具を再利用。更に窓やドアも鋼製建具を使わず、木製の建具を使用。木枠と建具の隙間を防ぐために建具じゃくりを切込んだ。
内装の仕上げは、珪藻土、漆喰、板壁、畳などの自然素材を使用し床板は浮造りの杉板。
環境に配慮し現代の暮らしに寄り添い、穏やかに過ごせる別荘に生まれ変わった。

施工:積和建設近畿株式会社  [京都府綾部市]
北庭のある住まい

30代ご夫婦が結婚を機に叔父の空き家をリフォームして受け継ぐことに。ご要望は「薪ストーブのあるすまいで自然のくらしを楽しみたい」。
敷地は郊外の高台に位置し、南側に君尾山を望み、北側は山が近く、緑の葉が光を反射して明るく美しい景色を楽しむことができる。これを活かし、南側はもちろん北側の景色も取り込むことでどの場所からも緑を眺められる住まいが完成した。
樹木の多い庭や建具はそのままに活かし、温かみのある塗り壁に触れ、薪ストーブで火を熾し、緑を眺めて自然のくらしを楽しめる空間となった。

施工:株式会社与組  [宮崎県宮崎市波島町]
STUBBORN HOUSE

施主の経営する焼肉屋を拡大したいという相談から、持ち帰りや通信販売のために焼肉のたれを製造販売できる自宅兼工場を作ることに。「STUBBORN」は焼肉のたれのブランド名。
古材の選定では全国のネットワークを利用し、最終的に新潟県上越市の築170年の旧農家の古材を活用することに。
ケヤキやマツの古材は樹齢推定200年以上で貴重なものばかり。施主がコレクションしてきた蔵戸やアンティーク建具、家具なども利用し、古材と調和した空間はまるで現代アートの様。 導線計画を上手く利用しアーティスティックかつサステイナブルな住宅となった。

施工:有限会社ササキ設計  [宮城県牡鹿郡女川町]
⼥川古⺠家移築再⽣の家

福島県奥会津にあった築160年程の古民家を女川町へ移築再生。
移築後の建物は4割近く減築。玄関土間を広くとり、その左手西面エリアと上部2階は、施主奥様がコレクションしている絵本作家の直筆画を展示するスペースに。
黒光りするケヤキの大黒柱などの他にも板戸、クリの床板、大きな神棚など可能な限り元の家の材を再利用。
玄関ホールからリビングは梁の見える吹き抜けのあるパブリックスペースとし、床の間や出書院のあった和室は寝室に。隣室はウォークインクローゼットを兼ねた納戸も配置し利便性の向上も実現した。