氷見の家

【 第8回古民家再築部門 】

氷見の家

◯地域の循環の中に位置づけた古民家リノベーション
富山県氷見市の築100年の古民家のリノベーション。
「ひみ里山杉」の製材業を営むお施主様は、自分たちの家を新築することではなく、創業者の住んでいた築100年の家を断熱改修して住むことに決めました。地域資源の循環の中に位置づけた家づくりとすることを念頭におき、地域木材を活用し、家族が健康に暮らせる快適な高断熱高気密住宅にすることを目指しました。

既存の建物は階高が高く開放的で、2階の天井をはがすと重厚感のある立派な丸太梁が現れました。他にも繊細な木彫りの欄間や美しい漆塗りの天井板など、活かせるものがたくさんあり、できる限り古材を活かした計画の検討がはじまりました。

遠方の現場であり、コロナ禍において様々な障壁もありましたが、現場では大工さんにビデオチャットでつないでいただいたりと、協力し合いながら進んでゆき、伝統的な趣を残しつつ地域ならではの個性を感じる空間となりました。

◯新旧素材が入り混じった趣のあるリビング
玄関からリビングに入ると、フローリングやダイニングキッチンの天井、階段、家具、建具等あらゆる箇所にひみ里山杉を活用し、どこを見ても地域木材が目に入る、素肌に優しく温かみのある空間が広がります。

既存の梁や柱はほぞ穴や傷も個性として活かし、吹抜の壁面やキッチンの腰壁、リビングのローテーブルに古材を用いた意匠とし、新旧の素材がバランス良く入り混じった空間となるよう努めました。

また、地域の伝統技法によりつくられた銅製の時計やペンダントライトを取り入れることで、より地域の特性を感じられる場となりました。
◯我慢する必要のない暮らし
木造の古民家のこれまでのイメージというと、隙間風が入り込んで寒かったり、伝統的な趣を重視するため快適性は我慢する、というように古民家の活用と快適性の両立は難しいと思われることもありました。
しかし、決してそのようなことはなく、正しい理解と丁寧な施工により古民家の改修においても暖かく快適な環境をつくることはできます。

今回の改修では、設計段階から建物の燃費計算を行いながら改修方針を決定し、外壁は十分な充填断熱と付加断熱を施し、高性能樹脂トリプルサッシを使用することで、年間暖房負荷41kWh/㎡の性能としました。
現場では気密検査を行い、梁の割れ目からの漏気をふさいだりと、改修ならではの状況にも対応しながら気密性能を向上させました。
◯地域の景観に馴染んだファサード
もとは敷地内には母屋と蔵があり、北側に庭がありましたが、地域とつながる明るい庭を通りに面した南側に計画するため、既存の母屋を敷地の北側に曳家しました。
南の庭に面した吹抜の開口部から、建物の中心部に十分な明るさを取り入れられるようになりました。

100年の歴史を感じる東面の既存の下屋や格子、欄間は丁寧に汚れを落として既存の風合いを活かして保存しました。
また、屋根の軒先を伸ばすことで外壁材の耐久性を上げる計画としています。
南面はお施主様が自ら制作したひみ里山杉の焼杉を貼り、地域の景観に馴染んだファサードとなりました。

◯お施主様からの声
「冬でも素足で過ごしても冷たくならない柔らかな足触りに無垢フローリングの良さを実感しました。
リビングの中央のソファに座ると新旧の木が見え、吹き抜けを下から見上げると鎧張りにした天井板と奥には二階の梁桁が連なっている絵が圧巻で、開放感もとてもある気持ちいい場所です。

キッチンの古材を使った腰壁もリビングのランプと時計も青銅でアクセントになっていて気に入っています。
二階から見る二階の吹き抜け窓は室内にいて外を見渡せるベランダにいるような感覚になれるとても開放的な場所です。
二階は白天井にしたことで古材が映えて、寝る時にもそれを見ながら寝ることができて雰囲気良くとても落ち着ける空間になっています。」

建設地富山県氷見市朝日本町
構造在来工法
階数二階建て
延床面積175.2㎡㎡
家族構成30代夫婦と子供2人