温故知新の古民家 解体寸前からの再生

【 第8回古民家再築部門 】

温故知新の古民家 解体寸前からの再生

京都府北部・綾部市の田園地帯にひっそりと佇む築150年の古民家は、10年以上住む人がなく、ほぼすべての基礎や柱がシロアリにやられ、梁は大きく傾いていた。愛知県で約30年間、造園・左官・外構工事等に携わってきた施工主がこの家に出会い、一念発起し古民家を購入。これまでの知識と経験を駆使し、一切の妥協を許さず、ほぼ全ての工程を一人で行い、フルリノベーションに取り組んだ。元からこの家にあったものや、地域の人から譲り受けた材料を活用し、昔のものを大切に残しながらも、システムキッチンやユニットバスなど、水回りには現代の使いやすいものを取り入れ、暮らしやすさを重視した。庭は、これまでの集大成となるものを作りたいとの思いが強く、何度も試行錯誤し、ようやく納得するものを完成させることができ感無量である。

【庭】
季節ごとに色を変える庭木は、植木の本場・愛知県稲沢市の市場にて選び抜いたものや、近隣の山から根巻きをして取ってきたものも。まるで洋菓子のような版築土塀は、解体される土蔵の土壁や、山の土など、色の違う土とセメントを混ぜ、層にして突き固めた。石積みや石張りのアプローチ部分は特にこだわり、鉄平石や御影石などの材料にも妥協せず、これまで積み上げた経験を余すところなく発揮し、納得のいく庭を作りあげることができた。水琴窟や鹿威しなど、風情を楽しむ仕掛けのほか、東屋や車庫も一から作り上げ、ピザ窯や薪棚なども設置して、暮らしを楽しむ工夫を存分に取り入れた。和風庭園の基本を重んじながらも随所に遊び心を含ませ、モダンな印象に仕上げた。
【土間】
明治時代から残る土間の雰囲気をそのまま残せるよう、床は全面三和土で仕上げ、天井を落として吹き抜けとした。堂々とした漆黒の梁が映えるよう、壁は白漆喰で仕上げ、コントラストを強調。一歩玄関に足を踏み入れると、ボロボロの状態からタイルを張って再生されたおくどさん、美しく磨きあげた流し、レトロなテーブルとして再生された薪風呂など、昔の生活を思い出させるような懐かしいもので溢れたノスタルジックな雰囲気を味わえる。基礎ブロックから作りあげた囲炉裏には、鉄平石を貼って仕上げ、屋根裏で長年燻された竹を磨いて火棚を作った。友人やご近所の人と過ごす憩いの場となっている。
【茶室】
この家のいくつかの場所には、床の間の丸窓や土間の丸抜き壁など、「曲線」を意識して取り入れた。その一つが、縁側を利用した小さな茶室で、緩やかにカーブした壁が特徴となっている。土間の横に併設され、家事や農作業の合間に靴を脱いであがって一息つくことができる。燻竹を磨いて床の間をしらつえ、茶釜や掛け軸などを設置し、小さいながらも本格的な茶室の雰囲気を演出。窓からは四季折々の庭の風景を眺められ、「和」を楽しむしかけ作りにとことんこだわった。

建設地京都府綾部市
構造伝統構法
階数平屋
延床面積120㎡
家族構成非公開

 

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