京の里山で蘇る茅葺物語

【 第10回古民家再築部門 】

京の里山で蘇る茅葺物語

 茅葺きの里、京都美山。
観光地として有名な地域のほど近く、観光客の姿は見えず、空き家や休耕田がひしめく集落があります。
空き家になった本家の古民家を、未来に繋ぎたい。その思いでこのプロジェクトは始まりました。
耐震性を高め、安心して過ごせる場所に・・・茅の匂いの感じることができる笑顔の集まるスペースにしたい。
薪ストーブを中心に大きな空間にすることで、会話が弾む空間にしたい。
 空き家になって約10年。再生は難しいと思われたほどに床は抜け落ち、柱は腐った状態でのスタートで、何度も諦めかけましたが、オーナーの想いを棟梁が受け止めて、試行錯誤しながらの施工を進めました。
ようやく完成した古民家は、にぎやかな憩いの場所としての役割を持って生まれ変わりました。
ここからまた、古民家カフェとしての物語が始まります。





既存建物内部の部屋の半分は解体し、土間と座敷との取り合いには面格子壁を設け耐震性能をUPしました。
雨戸は復元、周囲は全てガラス戸とし室内全体の明るさを確保しました。
土間の仕上げは墨モルタル、逗子部分の床面天井は吹き抜けとして高低差と色彩で開放感のある空間を作り出しました。

かつて茅置き場や養蚕場として利用されていた逗子二階は吹き抜けの部分を除き全面床張りとし、水平剛性を補強しながら茅葺職人の技を間近で見て、匂いまで感じることのできる大広間としました。
また、敷地内の農事小屋も外観に一体感を持たせた改装とました。
ご先祖様から受け継がれた本家の母屋を譲り受けることが出来ました。
過疎化がますます深刻化する村にあって、休耕田や耕作放棄地が増えつつあります。
大好きな美山のまちと茅葺古民家を多くの人たちに感じて頂きたい。そんな思いで再築に挑みました。
周囲の耕作放棄地を利用し大豆を栽培収穫して、「湯葉(ゆば」を振る舞うお店として再生し、
村全体の活性にも役に立ちたいと考えています。

建設地京都府南丹市美山町又林道中10番地
構造伝統構法
階数平屋
延床面積161.92㎡
家族構成40代夫婦