田の字型古民家でつなぐ語る場の創造

【 第10回古民家再築部門 】

田の字型古民家でつなぐ語る場の創造

空き家である築174年になるヤツオ型・田の字型古民家の改修を行い、地域内外の交流を促進するベース基地とし、低密度居住地域のコミュニテイーの創造をはかり、持続可能な地域としたいと思い改修に入りました。予算縮小の観点からDIY設計(意匠・構造・機械等設備)・DIY施工を取り入れるとともに、この敷地内にある品(古材・建具部品・障子・家具類)の利活用を徹底しました。
同一敷地内に他3棟があります。納屋であった1棟は里山整備の機工具の保管場所として、別の2階建棟は、海外技能実習生の住まい機能と企業のショールーム機能として稼働し2年を経過しました。残1棟の倉は内部の整理・整頓中です。
地域活力の低下の中で、どんな機能が拠点に在るか・生まれるかは現時点では不明瞭です。今は、地域課題を、この指とまれの語り合いのできる場ができたと感じています。和室・洋室区画の建具(障子・襖)を除去すれば大広間となり集会もできる田の字型間取り、さらに、大広間のタスク空間とアンビエント空間が継承されていたことも省エネ効果として感じ入りました。

台所・土間・廊下は、建具を抜き一体の協働ワーキングの記録の場としました。保育園児・幼稚園児・高校生・大学校生・企業・行政・介護施設のクライアントさんのDIY記録を掲示するとともに、地域の歴史研究会の地域文化性の情報発信をするツールを配置しています。この空間には施工ワークショップの記録にとどまらず、地域課題を解決するために行っています思考ワークショップの記録も掲示しています。
中黒柱・小黒柱、丸太梁・土壁(荒壁仕上)をみながら、冬季には移動型の薪ストーブを囲みながら、夏季には土間の持つ涼感の中で、気軽に文化性と低密度居住地域ならではの自然環境の維持保全を語ったりする場でもあります。環境省の「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトの啓蒙活動と林野庁の森林山村多面的機能発揮対策活動中の私たちの休息の場となりました。一般の方、ご家族の方々が簡易の調理をされて、休息されることも想定している空間です。
厚生労働省所管の四国職業能力開発大学校・住居環境科2年生に、総合制作実習科目の一貫として、玄関の改修を担って頂きました。虹梁は現存品の現しの状態を維持することを条件とさせていただきました。事前に建物の利活用の展開方法の概略を打合せしつつ、不必要品の片付け、天井の清掃、木造空き屋簡易鑑定調査の演習を行いました。作業をしながら建物用途の変更の意味・動線・構造を理解して、さらに、空き屋課題の認識をし、次世代へつなげたい気持ちが高揚し、縮小模型を造りながら玄関の意匠・造り付けの棚類の細かな寸法を決めています。高齢者・児童の歩行の観点から、既存の段差解消として式台を2段構えとし、和洋折衷の意匠とし、全体に明るい空間をめざしました。パネルの展示場所、文化的収蔵品の展示スペース、下駄箱等、細かなことに配慮した造作となっています。施工中に、他部所ご担当の高校生、プロの職人、保育所の方々、第三者の方々と語り合いつつ皆様の意見を青年が一つの空間にいたしました。造る過程の詰まった玄関です。
古民家の改修プロジェクトの成果として次の3点を竣工後の初動域の成果・想いとして検証いたします。
1 保育園児・幼稚園児・小学生の園外・校外活動の立ち寄り地になり、児童のみなさんに、田舎ならではの心証風景・古民家の良さを感じていただきたいとおもいます。平時、仏壇は、外陣の襖を設置し閉じています。(仏教系の園児の皆さんはお参りしています。仏壇は1365年製材の木でできており、意匠飾り品も工芸品としての価値が高いため、利活用することとしました。)
2 小屋組部位・床下部位は一部ですが、見学できるようにして木に親しむような仕掛けをつくりだしました。木育・伝統軸組構法の仕組みを直接目にされ、触れられて伝統構法に自然に親しんでいただきたいと思います。
3 襖・壁部位には、この地にあった古文書・歴史書の古文書の原紙を貼りました。この地域ならではの歴史・文化に触れていただきたいと思います。

建設地香川県 仲多度郡 多度津町
構造伝統構法
階数平屋
延床面積159.00㎡
家族構成舟岡山未来プロジェクト 未来邸