浦田の家 改修工事

【 第10回古民家再築部門 】

浦田の家 改修工事

 先祖代々に住み継がれてきた古民家を、若夫婦家族が現代に合う暮らしができるリノベーションをおこなう依頼を受けた。長い時間をかけて一族が住み続けられてきた、愛着が溢れた住み慣れた古民家には、居場所や物に想いが内包し記憶となって家族に住み継がれている。そのような掛け替えのない古民家を住み継ぐ為に、過去・現在・未来の想いの関係性を再構成して、家族がより長くこの場所で過ごすことが出来るリノベーションを目指した。
そこで改修を行った内容を創る・再生・継続の3つの項目に分類し、過去・現在・未来に含まれるエレメントを読み取り、どのような境界点の設計を行ったか説明していきたい。

(1:創る)既存の古民家にはなかった、現代に合う暮らしに必要とされる新しい価値を創ることになった改修内容を纏めている。
・居間に広がりを持たせるために、2階床を解体し吹き抜けを計画した
・居間に居心地の良い居場所を作るため、造作ソファーを計画した
・台所の位置を土間から室内に移動し、食と住を近づけた
・食事室と台所の動線を考えて、既存壁を一部撤去した
・階段を玄関正面に移動し登りやすく計画し、またインテリアのオブジェのように造った
・2階は将来を見据えながらフリースペースとし個室に転用できる計画をした
・新しく造る部材は基本的に素材色として、各年代に施工された材質と見分けがつくようにした

(2:再生)過去に評価されていなかった内容や、リメイクによって内容を再定義し新しい価値に変えた改修内容を纏めている。
・過去の増築で造られた窓格子を解体し、その部材を新たに設けた吹き抜けの手すりに活用した
・書院を解体し書院障子を、造作ソファー上部の間接照明として活用
・昔に使用していた、家具の扉を面材として活用
・床柱の表情を変え再利用するために、籐巻仕上げとしインテリアに合わせた
・天井材を撤去して隠されていた梁をあらわしとした
・過去に木組時に造られた、しゃくりなどをあらわしとした

(3:継続)過去から続く内容をそのまま利用することとした内容を纏めている。
・内部建具は用途に合わせて利用した
・玄関土間と客間の照明器具は修理して利用した
・敷台はオリジナルの素材と合わせ欅として、既存に見劣りしない国産無垢材を使用した
・内壁の左官工事は施主も参加し家作りを楽しんだ

このリノベーションでは、古民家の過去から続く内容を継承しつつ、現代に合わせた新しい価値を創造することによって、家族がより長くこの場所で過ごすことができるようになるように設計した。過去にはなく新しく創り出された部分。過去の評価されていなかった内容やリメイクによって再定義された内容を再生し、新しい価値に変えた部分。過去から続く内容をそのまま利用することとした部分。それぞれのエレメントを再構成することで、過去・現在・未来の想いを結びつける境界点を設計することで、家族がより長くこの場所で過ごせ、愛され親しみのある古民家を目指した。

玄関土間から見える敷台と階段
2階フリースペース(将来個室)から見える吹き抜け
造作ソファー(上部に書院障子で造った間接照明)で庭を眺める双子の姉弟

建設地大阪府和泉市
構造伝統構法
階数二階建て
延床面積180㎡
家族構成5人