ムク大谷石

【 第10回古材リユース部門 】

ムク大谷石

かつて多くの地域で組積された大谷石塀。
長い年月、雨風にさらされ続けた大谷石は耐震上の課題から姿をなくしつつある。

ただ廃棄してしまうのではなく、厚みのある無垢材だからこそ資源として再生させ、再築することができる。

高さ1.2m、長さ50m以上の大谷石塀を丁寧に解体し、約200枚の大谷石の資材(300×900×150mm/1枚の板材)として分解する。
表層は長い年月で風化しているが、厚み150mmのなかは未だに美しい色を帯びている。
大判の石材加工技術のある地元業者を探し出し、大谷石を切断加工することで表層を剥き、建替える住宅の内外装仕上げとして再利用した。

50年以上に亘って風化した大谷石だが、切断面は美しい淡緑色の発色を示す。
それらを、インテリアとして設えるだけでなく、大谷石の耐火性/蓄熱性を活かした仕上げ材として適材適所に配置した。
厚みがあって、加工しやすい素材だからこそできる大谷石の再築紹介である。

①大谷石の耐火性/蓄熱性を活かした美しい床仕上げ
 切断加工した大谷石の断面を新たな床仕上げ面とすることで、外構の部材だったとは思えないほど淡く美しい色合いが現れます。
 薪ストーブの輻射熱を「大谷石の床」と「コンクリートの壁」が蓄熱し、空間全体をいつまでも温かく保たせてくれるリビングダイニングです。
②新築の豆砂利洗出し仕上げのなか、古い表層のまま埋め込んだ大谷石を飛び石状に配置した玄関アプローチです。
ご近所さんと井戸端おしゃべりするためのベンチの足元に配置することで、足の長さにかかわらずゆったりとベンチに腰掛けることができます。
ベンチの上にワンポイントで飾った鬼瓦は大谷石と同じ年月を過ごした既存家屋の再利用古材で、名札として活用しています。
亡き祖父が建てた既存家屋と大谷石塀、その隣に家族で手入れしている葡萄畑。
これらの面影を残しながら、新しいライフスタイルに合わせた住宅を建てたい。と孫の私に設計依頼がきました。
残念ながら既存家屋(木造)の主構造はボロボロで改築が難しかったため、解体して建替えとなりましたが、
要所要所に再利用資材(大谷石や建具、型ガラス)が散りばめられ、普段の生活動線のなかで目にできることを喜んでくれています。

建設地山梨県笛吹市石和町
構造在来工法
階数二階建て
延床面積289.68㎡
家族構成葡萄農家一筋の90代祖母(定住)と定年退職して葡萄農家を始めた60代の父(2拠点生活)、建築士で孫の私