家と共に育む

【 古民家再築部門 】

家と共に育む

「これから住まう家族の家は、どんな家がいいだろう?」

小さな子どもたちの体に優しい、
快適で毎日元気に暮らせる、
長持ちする家…

理想の家を手に入れるためにスタートした親子の家づくり。
”家について” 知れば知るほど日本住宅の意味を実感!
夫婦が求める家は、
【自然素材を正しく使って、この風土に合う家】でした。

そして地域を想った時、そこには空き家がたくさんあって、そこに待つ古民家はまさに求める家だったのです。


歴史を感じる町並みの一角に建つ古民家は、家族が団欒するにはちょうど良い大きさと、ちょうど良い佇まいでした。
長く大事になされてきたため状態も良く、そのまま利用できる部分はできるだけそのままに残して新しい生活に合うよう間取りを変更しました。

家の中心にある和室の二間は、家族が集う広いリビングダイニングとなり、広さに合わせて天井を吹き抜けに高くしました。
70年間隠れていた梁が現れると、家族の目がワクワクしました。
棟木には、『昭和弐拾六年四月壱日』と上棟の日が記されており、建て主・大工・左官とこの家に携わった方々の名が残されています。
なんとも棟書きを見ると、かつての造り手が尽くした誇りに想いを馳せます。
当時の造り手に敬意を払い、昔ながらのやり方で今に生かします。
家は引き継がれ、伝統技術も引き継がれました。

材料は、古民家と同じ自然乾燥材を使うことで、これからも同じように時を刻んでいくことができます。
古くから林業が盛んだったこの地の材を、木の特性を生かした技術で扱うことで、長年かけて樹を育んだ山師たちの想いが汲まれます。
子どもたちの代には、きっと味わい深くなり、木と一緒に過ごしてきたことを感じるでしょう。

素朴に、其処に在ることが美しい、そんな自然と調和した住まい。

手仕事の工事は、時間をかけてゆっくりと自然のスピードに平行します。
進行状況を楽しみにたびたび訪れる家族と作り手は、そんな時間の中で関係を構築していきました。
子どもたちは自由に駆けまわり、大工さんのお仕事がおもしろそう。
ある日は、今日は何するの?と聞くと「草とり!」と言ってお庭に駆け出したり、遊びに来る虫やお庭にある石を見て、湧いてくる不思議をどんどん解決していきます。
料理好きの奥様は、開放的なキッチンで自然を眺め、家族を見守りながら調理を楽しむことができます。
以前の住まい手が慈しんだ小さなお庭の草花が移ろい、家族の家が少しづつ出来上がっていくと共にこの家に馴染んでいくようでした。


家族の家づくりのために住育学校へ通われ、住まいについて学ばれたお施主様。

日本の住まいを知り、古民家に住んだ感想を尋ねると、自然に合わせた営みが伺えます。
雨が降る日でも室内がベタベタせずに快適に感じること。
”夏を旨とする古民家” の冬は、アパート暮らしに比べると寒かったこと。しかし、薪ストーブで楽しく乗り切り、また夏を迎えるのが楽しみだと話されます。

子どもさんたちも、以前に比べ走り回ったり、大きい声を出して歌ったりすることが多く、箒のギターを持って床の間はライブステージになるんだとか。

改築中も、住んでいても職人の技を感じることができるというお施主様の言葉に、かつての職人と今に継いだ職人と、そしてここに住まう家族がこれからも家とともにあることを感じます。

建設地福岡県八女市
構造在来工法
階数平屋
延床面積110.00㎡
家族構成ご夫婦と2人のお子さん