伝統建築のリアルメッセージ

【 古民家再築部門 】

伝統建築のリアルメッセージ

『伝統建築のリアルメッセージ』
明治27年から続くこの酒蔵の建物と工場は岐阜県各務原の市街地から北へ15分ほどの小高い山の麓にあります。
主屋、離れ、酒造門及び塀、通用門、一連の建物は国の登録有形文化財となっており、今回は離れの改修工事を行いました。
酒蔵作業をしながらの2家族が住まう住居は、冬は寒く夏は暑く、今後どのように住めば良いのか、住みながら残していく文化財建築の難しさ、、、一層解体して新築も考えた家族の数年間との事でした。
今回ご縁があって施主様家族とのお話と現場を調査させていただきました。
先人達が残してくれた、見ればみるほど素晴らしい伝統構法と免震構造そしてその様式(書院)は再現することが容易でない、正に伝統的建築物の貴重な宝物でした。
施主ご家族共もに数ヶ月の打合せの末、内部のみの再建築を提案させていただきました。外部と主要な構造は変えず、できる限り竣工当時の雰囲気に戻す空間造りとしました。
そして、住居性能(断熱等)を高め、快適な住居への改修を目指しました。
内装材には伝統的材料(漆喰等)を使い、天然国産材(愛知県産杉板)などを使用し、床板や柱、欄間、などの木部は当時の色合いを求めて総力をかけて磨き補修復元しました。
結果、快適な歴史的空間に蘇りました。
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離れが竣工した明治45年〜頃は、今日のコロナウイルスと同じようにスペイン風邪が猛威を振るった社会でした。その後地震や戦争など幾多の苦難の歴史を乗り越えて現在に至っております。
工事進行中に、まるで当時を思い起こすかのように明治44年の古びた新聞の一部が屋根裏から柱に巻かれて出てきたのには驚きとともに、素晴らしい伝統技術と日本人の生き方を誇っているかのような先人達からの大切な思いを、今に生きる私たちに向けて届けてくれる『伝統建築のリアルメッセージ』のような気がしてなりません。

小町酒蔵離れ・1912年・木造平屋建・伝統構法・建築面積66平方(国登録有形文化財)

床下〜天井裏にロックウール断熱材を入れる。
長押、欄間、柱、無双窓、障子、緊迫い天袋、は手作業で磨きと修復を行い当時の雰囲気に近づける作業をしました。
新たに左官仕上げの欄間に外気遮断の用に小障子を設けました。
また、電気スイッチ、コンセント、TV,ネットなどの配線を埋め込むフラシュ柱を部屋の隅に新設しました。
現代ではなかなか見れない障子の美しさを感じる空間を残しました。
天井材と床材材の杉板は愛知県産認定材を使用しました。
外部写真
寒さを防ぐ為にペアーガラスサッシとしました。
(木製建具等の計画でしたが、予算的な事がありました。)
外部の左官仕上げや柱、木部分などは手作業で清掃しました。

建設地岐阜県各務原蘇原伊吹町2丁目16番地
構造伝統構法
階数平屋
延床面積66㎡
家族構成非公開