伊藤邸リフォーム工事

【 古民家再築部門 】

伊藤邸リフォーム工事

出会い:
本件は、大正14年頃建てられ長年賃貸住宅として利用された民家である。それが近年分譲され、それを古民家好きの建築主が購入した。長年賃貸住宅であったせいか、民家には、ビニルクロス、ベニヤ、プリントフローリング、アルミサッシなど、現代の建材が多く使われており、人が住める状況ではあったが、質感がなく落ち着かない空間であった。
建築主の要望は、そのような状態を、建設当初の落ち着いたものに戻したい、原風景を再現したいというもので、その考え方が、設計者の考え方とマッチングして、受嘱に至った。
民家が不本意な鎧を纏い、民家の持っている本質と齟齬していたのである。
建築主の目的が明確であり、リフォームが前提であったので、予算も考慮して、直接、設計と監理、施工に入っていった。
主旨:
鎌倉市内に住む建築主の御夫婦の要望に対し、「鎌倉にある癒しのセカンドハウス」を創るというコンセプトの元、夫婦の憩いの場を創ること。そして、クッキングスクールによる近隣の方との交流を目的とした台所を創り、特注の流し台等を設置した。
空間:
リビングの天井を内断熱にして化粧野地板を張り、梁を見せて見せ場とした。また、夫婦の寝室を北側に配し、将来民泊もできるプランニングとした。
土壁と外構:
既存土壁は、竹木舞を用いて再構築し、床下のシロアリ被害部分の構造体を修繕し、見えない部分にも十分配慮した。 外構については当初計画するつもりであったが、予算の都合上、剪定のみとした。
構造体:
予算とリフォーム瑕疵保険の都合上、構造体には手を加えない考えであったが、建物の歪み、柱の傾き、シロアリ等の床下の被害や悪条件が工事中に露見し、それらを改善したため、実際はスケルトン解体に近い工事となった。屋根は雨漏りをしていなく、比較的良好な状態であったので、そのままにした。

縁側の復活:
建設当初の雰囲気に戻す要素の一つとして、縁側の復活を建築主より要求された。そこで、住宅の東側と南側に廻り廊下のような縁側を復活させた。庭との一体感が生まれ、とても良い空間となった。
古建具の再利用:
建設当初の雰囲気に戻す要素の一つとして、建築主と設計者で、2日間かけ、古道具屋で古建具の実測や選別を行い購入した。そして、それら古建具を、現場に適正に配置した。
夫婦で旧鎌倉市街の散策と古民家カフェ巡りをするのが趣味で、いつかは縁側のある古民家に住みたいと考えていました。
この家は、外観は古民家の風情があるものの、家の中は、現代の生活に合わせて、クロスやサッシなどにリフォームされていました。
建築当初の間取りはL字の縁側があったことが想定され、ぜひ建築当初の間取りを復活させたい思いが募り、購入することにしました。
当然のことながら新築することは全く考えておりませんでした。
建具は古家具古建具を扱う桜花園で購入しましたが、現在の建材では出せない味わい深さがあります。建築再生工房株式会社タケウチの竹内社長に、同行してもらい購入しました。
雨戸を開けたり閉めたり手間は掛かります。また、木戸ですので隙間風が入ります。しかし、先人がそうしてきたように、冬は障子を閉めて、少し着込めばいいし、夏は戸を全開にすれば、風が抜けていきます。縁側に寝ころべば、背中がひんやりと気持ちがいいです。
縁側を通しての内外の景色は、95年前と変わらない景色です。縁側に座ると現代の気ぜわしい生活からペースダウンした感覚になります。

建設地神奈川県鎌倉市
構造伝統構法
階数平屋
延床面積78.87㎡
家族構成夫婦と子2人の4人家族