十三浜の家

【 第6回 被災地部門 】

十三浜の家

仏壇、神棚のある多目的居間の吹抜け上部の空間。古材の梁がダイナミックな空間を演出している。改修前の家はのダイニング・広間は低い天井で、圧迫感があり窮屈な印象でした。この地域は元々養蚕が盛んな地域であったことから、2階スペースは養蚕の作業場として使用されていたため、1階の梁天井は手を伸ばせば届くほど低かった。そこで、吹抜けにすることで、複雑に組まれた2階梁組を眺められる広がりのある空間に改修した。解放感を損ねないよう吹抜けまわりを囲むように通路を設け、各室にアクセスできる動線を確保した。


「十三浜の家」が建つこの地域は、1986年の明治三陸大津波によって大きな被害を受けている。沿岸部にあったこの集落はその後、1933年の昭和三陸大津波でも被災し、高台へ集団移転した。
A邸は元々沿岸部に家があり、明治三陸津波で家が流され、現在の高台に集団移転していたため、2011年の東日本大震災の津波被害は免れた。
築87年の家だが、構造には問題はなく、壁の漆喰の被害、屋根の補修をメインに再生に取り組んだ。
薪ストーブのある広間。上部梁組の空間を見上げる。暗く圧迫感のあった居間は吹抜けにし、上部にはトップライトを設けリニューアル。古民家の趣はそのままに、高断熱仕様に設計したので、薪ストーブを焚いても暖かい空気は逃げず、また吹抜け上部に溜まる暖められた空気をサーキュレーターで下ろし、冬暖かく、夏涼しい空間をめざした。

建設地宮城県石巻市
構造伝統構法
階数二階建て
延床面積245.77㎡
家族構成60代息子と90代母親