想い出と共に住み継ぐ家

【 第6回 被災地部門 】

想い出と共に住み継ぐ家

築113年の木造軸組み2階建て。2016年4月に発生した熊本地震により大きな被害を受け、娘さんの住むアパートで過ごし続けた施主様。ご高齢の夫婦が住む自宅の大規模改修は、限られた予算と100年以上前の立派な柱や梁など、残せものはなるべく残したいという施主様の想いを守ることが課題となった。今後の地震に備え、制振ダンパーや面格子パネルを活用した耐震補強工事を実施。さらに、昔ながらの急勾配の階段は場所を変え、緩やかな傾斜にすることで安心して暮らせる家に生まれ変わった。8畳の和室は娘さん家族が遊びに来ても十分な広さにするため、ダイニングと繋ぎ天井や壁を取り払った。それによって、100年以上前の匠の技が日の目を見ることとなった。南側玄関の脇には物置となっていた洋室からオープン和室に変更。気軽に人が集まれるくつろぎの空間となった。古民家ならではの立派な大黒柱や梁からなる広々とした空間を風が通り抜け、クーラー要らずの涼しさだ。現代では貴重な透かし彫りの欄間と組子のほか、施主様の希望で納屋に眠っていた格子戸や建具を再利用。想い出のあるものは目に見えるものとして残し、時代を超えて住み継がれる家に生まれ変わった。

【オープン和室】
玄関アプローチ脇の気軽に人が集まれるオープン和室。
耐震補強を兼ねた面格子パネルが味のある雰囲気を演出。
お花を飾ることが好きだという奥様は、これからどんな風にこの空間を使っていこうかとわくわくされていた。

【伝統】
昔の職人の技が光る貴重な透かし彫りの欄間。
素敵な襖もそのまま残し、魅力ある和の空間が広がる。
【繊細な技】
部屋と広縁を仕切る組子の欄間は、釘を使わずに木を組み付ける繊細な技術が必要。
手間がかかっても既存のものをなるべく活かし、L字型に三部屋を囲む広縁に沿って造作建具を新たに設置した。

建設地熊本県菊池郡菊陽町
構造伝統構法
階数二階建て
延床面積200.00㎡
家族構成非公開