ほどよい距離で暮らす古民家

【 古民家再築部門 】

ほどよい距離で暮らす古民家

 築72年の平屋の古民家です。戦後1年で完成した建物なので、岐阜の地元の山から引いて製材したヒノキでつくられています。
「古民家鑑定」「伝統耐震診断」により、「伝統構法であるにもかかわらず、在来工法の揺れ特性を示している」という判定が出、それに伴った考え方で再築しました。
 写真奥の茶色い天井は築72年の和室、手前の白い天井部分は、築54年の増築部分です。築54年は解体したところ柱の根元も張りも腐って危なかったので、在来工法で建て替えを行いました。新旧部分をバリアフリーにつなげ、広々としたリビングダイニングを実現しました。

 トイレは現代的に機能重視で作りました。古民家だからと言って清潔感(掃除の機能性)は大切だからです。
 断熱効果のために二重窓を採用し、床も防汚のCFシートを使っています。
 ただ、ドアだけは、ペアガラス化のために取り外した北の縁側のドアを接ぎ木してさらに自動開閉ドアにし、再利用しました。
廊下からの風景を損なわず、70年経ったアンティークの建具が活きることを考えました。廊下からの写真が残念ながら掲載できませんが、民芸茶箪笥とよく合う素敵な廊下になっています。
 断捨離を熱心におすすめした結果、モノであふれ真っ暗で、畳までじゃりじゃりしていた二つの部屋(写真手前中央と中央左)が、すっきりした寝室としてよみがえりました。お施主様の断捨離努力のたまもので工事だけではかなわなかった仕上がりです。横の部屋はクローゼットとして使用できるよう、広く、しかしハンガーなど壁面収納を多く設けています。(写真手前で見えません。残念です)
 病気になった母と暮らしたい、という願いから、平成31年4月古民家のリノベーションを決意しました。残念ながら、工事の真っ最中、令和元年5月にあっという間に他界してしまいました。が、母は毎日大工さんと顔を合わせるのを楽しみに、最後の最後まで元気に暮らしていた家です。出来上がってほっとしたと同時に、母と離れた辛さから、断捨離を始めました。担当の吉田さんからは「まだそんなに急がなくても」といわれましたが、新しい家を「自分と新しい家族のために住む」という感覚を刻むために、沢山のモノを捨てていきました。工事が始まる前も、大工さんや女性スタッフと母が話し合ってとっておいた家具や道具がありましたが、それも思い切って、捨てたいものは捨てました。
 この会社に出会っていなかったら、新しい家にしたとしても思い出に飲み込まれてまた元通りの家具を使い、道具を使い…と、気持ちが変わらなかったかもしれません。ですが、スタッフの皆さんと話し合って「大事なものだけを、後悔せずに残す」ことができました。まるでみんなが家族のようでした。
 工事が始まると、築54年の増築部分の建物が腐っていることが判明し、一部だけを再度新築しました。その際、事前に行った「伝統耐震診断」にて、在来工法の工法でやればよいと判定が出ていたので、伝統構法ほど高くない価格で再築をすることができ助かりました。
 また再築後は「伝統耐震診断」の2度目を行ってもらい、耐震強度が十分かどうか、安全性をもう一度測ってもらえます。古民家再生協会をとおして頼んでよかったと、その点でも思っています。

建設地岐阜県岐阜市
構造伝統構法
階数平屋
延床面積171.56㎡㎡
家族構成50代夫婦と20代子供の3人家族