地域と活きつづける家

【 古民家再築部門 】

地域と活きつづける家

淡路島は古くから国生みの島と謂れがあり、その中心に位置する洲本市本町商店街の一角に築100年を超える古民家「米田邸」があります。
米田邸は出光興産の創業を全面的に支えた日田重太郎氏の次男が暮らしており、重太郎氏もよく訪れていたそうです。その歴史的背景とそれに恥じない意匠のこの建物を地域のために活かしたいという現オーナーの気持ちに共感し、NPO法人が活動の拠点とすることを決めました。そして、その両者の思いを形にする為にアトリエグリュ一級建築士事務所と(株)アイザックアワジ、京都工芸繊維大学の大学院生が共同してプロジェクトチームを結成しました。

私たちが初めてこの場所を訪れた時、阪神淡路大震災により建物は大きく傾きその応急処置として筋交いが張り巡らされ、内部に侵入することも困難な状況でした。その傾きによる荷重は、隣家と外壁を共にする構造上数件分に及にます。また、建物の長い歴史と共に溜まった古書や木の箱などが散乱していました。
しかし店の間・中庭・離れ・蔵を備える町家特有の間取りや、飾り窓や檜の柱など細かな意匠に深い魅力を感じました。
そして私たちは、歴史と意匠に敬意を払いこの先もずっと幅広い方々に使ってもらえるよう、建物を「活かす」ことをテーマとして改修を行なうことにしました。

まずは隣家の荷重への耐力を高め、今後新たに100年の命を吹き込むことを目的として、構造計算を行いバランスよくオイルダンパーを配置しました。
また空間を一体として使用したかった2階では、鉄剛造の筋交いをそのまま見せることで視線の抜けを確保し、閉塞感を生むこと無く構造強化しました。

1階の店の間はNPO法人の活動拠点であり地域の方を始めとする様々な方が集う場所にとの思いを汲み取り、座敷を中心に人々が集えるよう周辺の壁をほぼ抜き、縁側を配しました。
また、棚であったと思わしき小上がりを活かし、様々な人がよりこの建物と交流を持ってもらえるようにとの願いを込め、地元の野菜や工芸品を販売するスペースにしました。

2階の低い天井板を取り除くと淡路島特有の様式の立派な小屋組が現れました。土がむき出していた天井裏に化粧材を張り梁を見せるデザインにし、更に急勾配の階段を取り除き吹き抜けとし、1階からも小屋組が見えるよう工夫しました。
部屋に散乱していた物は一つ一つ整理し、時にはアレンジを加えてテーブルや調度品として利用しています。
また、ゆらぎガラスや雪見障子など貴重な建具が多く使用されていたこともあり、痛みが少ない物は軽く修繕しそのまま使用しています。

そして最後に、ワークショップを行い店の間の照明を地域の方と共に作り、建物に明かりが灯りました。
そうして多様な人を巻き込んで完成した建物はYORISOI米田家と名付けられ人々の居場所となるように日々進化中です。
私たちプロジェクトチームも建てて仕事を終えるのではなく、掲示板を作成したり蔵の改修プランを練ったりと建物を「活かす」為にこれからも改修を続けていきます。

建設地兵庫県洲本市
構造在来工法
階数二階建て
延床面積267㎡
家族構成なし