「丸沼美術サロン」地域に開かれた場をめざして

【 新民家部門 】

「丸沼美術サロン」地域に開かれた場をめざして

「美術品を展示したい、音楽の演奏会を開きたい、喫茶店としてくつろげる場をつくりたい、古民家の部材を再利用したい」

初めの建主様からの要望は一見相容れないもののように思われた。
建主は多数の美術品を所有する美術品の収集家であり、絵画に留まらず、彫刻、陶器、銅像など、すべて合わせると美術品は三千点以上にも上るという。
これらの美術品をこの地域の芸術、文化発信の場であると同時に、施設を地域に開き、地域文化コミュニティの場として計画することが要求された。
又、かつて住まわれていた茅葺の古民家が近くの別敷地に建っていたが、老朽化に伴い、その用途を終えた。
古くからなじみのある佇まいを新しく計画する喫茶店の一部に生かして、その雰囲気を継承する事ができないかといったかつての希望を叶えることが求められた。
                         
計画地は緩やかな傾斜地にあたり、敷地に合わせるように計画床高も緩やかに段差を設け、スキップフロアとして、床の段差を利用した展示を考えた。
フロアごとに多種多様の美術品を各種類ごとにエリア分けし、内部はほぼ仕切りのないワンルームであるが、床の段差によって視線が変化していき、展示物の見え方も少しづつ変化していくといった仕掛けを計画に取り入れた。
またワンルームを緩やかに分節していくといった、まさに多様な種類の美術品をタイプごとにエリア分けして展示するには適した構成となった。                                 
また、古民家の小屋梁として使われていた丸太梁を一部再利用し、壁はRC造、小屋組は木造といった形で再築し、古材を継承することで、建物のアイデンティティーと建て主の思い出を継承することができ、愛着の沸く建物となったのではないかと思う。        

美術品の展示をして芸術文化の発信基地とすること、喫茶の用途を盛り込み、コミュニケーションを通して、地域活性化の一助となすこと、などお互い相乗的であったり、相容れないものであったりするものを再構成し全体として地域にあったあり方で計画できたのではないかと思う。今後、地域のコミュニケーションの場として深く根付いていくことを願います。

建物の外形は以前の茅葺屋根の古民家であった当時の形状を大きく変えることなく、地域に合った形で馴染むように計画している。
また、この地域に開き、地域のコミュニティの場となるように、通りを行き交う人々を呼び込む仕掛けとして、通りからエントランスまでのアプローチに建物へのアッパーライトで周辺を明るくしている。それと同時に周囲の防犯性も高め、安全性を寄与するよう計画している。
屋根頭頂部はガラスの三角屋根とし、建物全体の排煙、換気を賄うと同時に昼間の日の光を、天井に設けた障子越しに間接的に内部を柔らかく明るくしている。
和室であり、陶器展示コーナーでもある部分には、旧古民家の茅葺部分に使用していたススダケを利用し、和室の天井へ再利用している。
このススダケを天井より吊下げ、ルーバー状に設置することで新しい部分と古い部分との調和を図っている。
解体前の古民家にはケヤキの大黒柱、中黒柱 小屋梁はケヤキの太鼓梁、丸太梁等が使われていて、一度すべてを解体し、選定し、再構築していった。
なるべく、古民家のあった状態にて組み上げていったが、計画に合わない部分もあり、長い部分はカットし、短い部分は車知やボルトを用いて長さの調整を図った次第である。
仕口には釘や金物は用いず、ホゾや込み栓を用い部材の固定を計ることで古くからの構法にて小屋組みを再現していった。

建設地埼玉県朝霞市上内間木
構造RC造
階数平屋
延床面積166.27㎡
家族構成非公開